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9-24 空港での別れ 2

last update Huling Na-update: 2025-06-07 14:30:05

 15時――

 朱莉が蓮を連れて面会に現れた。

「こんにちは、翔さん」

「ああ……朱莉さん」

翔はPCから顔を上げると弱々しい笑みを浮かべた。

「ど、どうしたんですか? 顔色が酷く悪いですよ? まさか具合でも悪いのですか?」

「いや。そうじゃないんだ。ただ……」

「ただ?」

朱莉は首を傾げた。その様子を見て翔は思った。

(駄目だ……こんな重要な話……絶対に隠しておいてはいけないに決まっている!)

「朱莉さん……落ち着いてよく聞いてくれ」

「は、はい……」

朱莉はただ事ではない翔の姿に何かを感じ、ベッドの傍に椅子を寄せると蓮を胸に抱きしめ、翔を見た。

「会長に命令されたんだ。体調が回復次第、カルフォルニア州へ行くようにと。それも4年間……」

「え……?」

(そんな……私はどうすればいいの? レンちゃんは……?)

「朱莉さん……。俺と一緒に来てくれるか? カルフォルニアへ……」

翔はほぼ絶望的な訴えとは知りつつも朱莉に尋ねた。そしてもし……この場で頷いてくれたなら正式にプロポーズをしようと考えた。

しかし――

「す、すみません……。そ、それは……無理……です……」

朱莉は申し訳なさそうに、今にも消え入りそうな声で返事をすると俯いた。

「そうか……そうだよな。何せ俺達は……」

翔が言いかけた時、朱莉は口を開いた。

「病気の母が心配なので……私は日本を離れることは出来ません! す、すみません……」

朱莉は再び、俯くと肩を震わせた。

「え? お母さん……?」

(朱莉さんが俺について来れない理由はお母さんのことだったのか? それなら……)

翔は下唇を一度ギュッと噛んだ。

「朱莉さん……本当に悪いけど、俺が日本に戻ってくるまで……蓮を頼めるかい?」

「は、はい! 勿論です!」

朱莉は力強く頷いた。

「ありがとう、朱莉さん……」

翔はその時に決めた。4年後、日本に戻ってきたら朱莉に正式に結婚を申し込もうと。その答えがどんなことになっても受け入れようと。

「俺は明日退院するんだ。そうしたら少しずつ転居する準備をする。そして退院後の外来診察が終わったらすぐに日本を発つよ。だから悪いけど……荷造り手伝って貰えるかい?」

翔は照れ臭そうに尋ねた。

「はい勿論です! 私に出来ることならどんなお手伝いもいたします」

朱莉は笑顔で返事をした――

****

 翌日――

 翔は無事に退院手続きを終
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